下痢(水下痢)でお悩みの方へ
通常の便は水分を約60〜70%含み、しっかりとした円筒状の形をしています。これに対して、下痢便は水分量が75%を超え、特に急性の場合には90%以上に達することもあります。状態としては液体または半液体で、腹部に締めつけられるような痛みを伴うこともあります。
下痢は、冷えや食べ過ぎ・飲み過ぎといった日常の小さなきっかけで起こることが多く、多くの方が一度は経験されているのではないでしょうか。ただ、水のような便が出たとしても、1回限りであったり、数日以内に自然と治まったりしている場合、特に心配はいりません。
ただし、1週間以上にわたって水下痢が続く場合や、頻繁に繰り返して日常生活に支障をきたすような場合、便秘と下痢を交互に繰り返す、あるいは吐き気を伴うといった症状がある場合には、何らかの病気が背景にある可能性も考えられます。気になる症状があれば、どうぞ遠慮なく当院までご相談ください。
下痢の原因
体調が悪くないのに下痢が続く場合
体に不調がないにもかかわらず、下痢が長引く場合には、以下のような要因が関係している可能性があります。
食物アレルギー
特定の食品に対するアレルギー反応で下痢が起こることがあります。牛乳やチーズなどの乳製品、小麦(グルテン)、卵、ナッツ、魚介類、大豆などが代表例です。体がこれらの成分を異物と認識して防御反応を起こすことで症状が現れます。
腸内細菌叢のバランス異常
腸内の善玉菌と悪玉菌のバランスが崩れると、栄養吸収や腸の防御機能が乱れ、下痢が生じやすくなります。
ストレスや不安
精神的ストレスや不安により消化器の働きが乱れ、下痢が起こることがあります。
炎症性腸疾患
潰瘍性大腸炎やクローン病など、腸の炎症性疾患も下痢の原因になります。これらは活動期と寛解期を繰り返す慢性疾患で、長期的にはがんリスクも高まるため、専門的な診断と継続的な管理が必要です。
薬の副作用
一部の医薬品やサプリメントは下痢の原因となります。代表的なものには抗菌薬(アモキシシリン、クラリスロマイシン)、NSAIDs(イブプロフェン、アスピリン)、マグネシウム含有制酸薬、水酸化マグネシウム、抗がん剤(シスプラチン、フルオロウラシル)、心拍を整える薬(ジゴキシン)、糖尿病治療薬(メトホルミン)などがあります。
嘔吐と下痢が見られる場合
感染性胃腸炎
ノロウイルスやサルモネラ菌、大腸菌などによる感染が原因で、吐き気や下痢、発熱を伴います。脱水状態に陥ることもあるため、水分補給が困難な場合は点滴治療が必要です。
食中毒
食べ物に含まれる細菌・ウイルス・寄生虫や有害物質の摂取によって起こり、腹痛、吐き気、下痢、発熱などの症状が現れます。
腸管出血性大腸菌感染症
O-157などの腸管出血性大腸菌による感染で、下痢、腹痛、吐き気、発熱、血便などが生じます。シガ毒素という有害物質を産生し、激しい下痢を引き起こすことがあります。
胆道炎
胆のうや胆管に炎症が起こる病気で、胆石や細菌感染が原因です。症状には右上腹部の痛み、吐き気、黄疸、下痢などが含まれます。胆汁の流れが妨げられることで脂肪の消化・吸収が不十分になり、下痢が起こります。
胆のう炎
胆石による胆汁の滞留や細菌感染が原因で起こります。胆道炎と似た症状が現れ、右上腹部の痛み、吐き気、下痢、発熱などを伴うことがあります。
年齢別に考えられる下痢の原因
下痢が見られても「一時的な不調だろう」と考えて、下痢の症状をそのままにしてしまう方も少なくありません。しかし、年齢によって下痢が長引く背景には異なる要因があり、適切な治療を受けずにいると、症状が悪化する恐れもあります。
20~30代で下痢症状があるときに注意したい病気
過敏性腸症候群
便通の乱れが長期的に続き、腹痛や吐き気、腹部の膨満感などの不快な症状があるにもかかわらず、大腸カメラなどの検査で炎症や潰瘍が確認されない場合、「過敏性腸症候群」と診断されることがあります。
この疾患の背景には、精神的なストレスや食生活の乱れ、大腸の働きに関する異常などが関与していると考えられています。
カンピロバクター腸炎
腸炎の原因として知られる「カンピロバクター」による細菌感染症です。
現れる症状には、下痢や腹痛、吐き気、発熱などがあり、稀に血便が出ることもあります。
この菌は牛・豚・鶏などの腸内に生息しており、十分に加熱されていない食材や、汚染された調理器具・手指などを通じて体内に入り、感染を引き起こします。
サルモネラ腸炎
腸炎の原因として知られる「サルモネラ菌」による細菌感染症です。
主な症状には、下痢、腹痛、発熱、吐き気、嘔吐などがあり、重症化すると脱水症状を起こすこともあります。
この菌は鶏卵、鶏肉、豚肉などの食品に付着していることが多く、十分に加熱されていない食材や、調理過程での二次汚染(まな板・包丁・手指など)を通じて体内に入り、感染を引き起こします。
潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎は、大腸粘膜に潰瘍が形成される炎症性の疾患です。この病気の原因は未だに明らかになっておらず、主な症状としては、腹痛や下痢、血便などが挙げられます。
病状が進行すると、これらの症状が頻繁に、かつ大量に現れるようになります。さらに、体重が減少したり、貧血や発熱などの全身症状を伴ったりすることもあります。
クローン病
クローン病は、口腔から肛門までの消化管全体にわたって、慢性的な炎症や潰瘍が生じる疾患です。特に小腸や大腸に症状が現れやすく、下痢や腹痛、血便、体重の減少、倦怠感などが主な特徴です。
また、腸管狭窄や関節炎などの合併症を引き起こすこともあります。
40~50代で下痢症状があるときに注意したい病気
更年期の影響
女性は閉経した後の更年期以降、下痢の症状が現れやすくなることがあります。
この時期には、自律神経の乱れや冷えなどの更年期障害の症状とともに、下痢が生じることもあります。加えて、ホルモンの分泌量が減少することで、尿漏れや脂質異常症、骨粗鬆症などのリスクが高まります。
大腸ポリープ
大腸ポリープとは、大腸に生じる腫瘤(できもの)のことです。放置すると徐々にサイズが大きくなり、やがて悪性化してがんへと進行する危険性もあります。
ポリープは小さい段階では無症状のケースがほとんどですが、サイズ・発生箇所によっては下痢や腹痛、お腹の膨満感、血便などの症状が出ることもあります。
大腸がん
大腸がんの初期段階では、ほとんどの場合、目立った症状は現れません。
しかし、腫瘍が成長して腸管内を狭めるようになると、便通異常(便秘や下痢)、血便、便が残っているような感覚、腹痛、貧血、吐き気などの不調が現れることがあります。
60代以上で下痢症状があるときに注意したい病気
感染症
加齢に伴い、体の免疫力は徐々に低下していきます。その結果、風邪やインフルエンザ、感染性の胃腸疾患などの感染症の発症リスクが高まってしまいます。
また、下痢の症状が出ている場合には、吐き気や高熱、咳、くしゃみなどを伴うこともあります。
薬剤性の下痢
加齢に伴い、身体の機能は徐々に低下していきます。
慢性疾患を抱えている方の中には、複数の薬を継続して服用しているケースも少なくありません。特に、消化管に作用する薬剤(ミソプロストールやプロトンポンプ阻害薬)、免疫抑制薬、抗がん治療薬などは、下痢を引き起こしやすいとされています。
特に高齢者で腎臓や肝臓の働きが弱っている場合には、こうした副作用が現れやすくなる傾向があります。
糖尿病などの病気
年齢を重ねると、慢性下痢の背景に病気が関係しているケースも見受けられます。例えば、糖尿病を患っている高齢者の場合、合併症の1つとして下痢の症状が現れることがあります。
これは、糖尿病神経障害の発症により、消化管の働きをコントロールする自律神経の働きが乱れることで、消化管に異常が生じ、結果として下痢を引き起こすと考えられています。
下痢が長く続く場合の検査
下痢の診察では、まず問診を通じて便の色や形状を確認し、食べすぎ・飲みすぎや食中毒など、思い当たる原因があるかどうかも伺います。炎症性の腸疾患が疑われる場合には、大腸カメラ検査で粘膜全域を詳しく観察し、異常が見つかれば組織を採取して検査を行います。
当院では、日本消化器内視鏡学会の専門医の資格を持つ医師が検査を担当しております。豊富な診療経験と最新の内視鏡機器を活用し、患者様のご負担を最小限に抑えながら、迅速かつ精度の高い検査を丁寧に実施しております。どうぞ安心してご相談ください。
下痢(水下痢)を出し切る方法
水下痢が続く場合、まずは体内から失われた水分をしっかり補うことが重要です。経口補水液やスポーツドリンクなどで水分と電解質を補給し、脱水を防ぎましょう。食事内容や日常の過ごし方を見直すことも回復への一歩です。
下痢が出ている時には、消化に負担をかけない食材の方が望ましいです。具体的には、バナナ、ご飯、りんごのすりおろし、トーストなど、繊維が少なく消化しやすい「BRAT食」と呼ばれる食品が、改善に期待できるとされています。

