痔ろう(穴痔)・肛門周囲膿瘍

痔ろう(穴痔)・
肛門周囲膿瘍について

〜なぜ自然には治らないのか。そして正しい治療が大切な理由〜

痔ろう(じろう)や肛門周囲膿瘍(こうもんしゅういのうよう)は、肛門内にある「肛門腺」に細菌が入り、炎症が起こることで始まります。膿(うみ)が溜まると肛門周囲膿瘍となり、破れて膿が排出されても通り道(瘻管)がトンネル状に残り、これが痔ろうです。

痔ろうは自然に治ることはありません。放置すると、痛みや排膿を繰り返し、瘻管が複雑化することで治療が難しくなります。早期に適切な治療を行うことが、生活の質を保つうえで重要です。

当院では「痛みの少ない治療」「日常生活への影響を最小限に」「再発を防ぐ」ことを重視し、状態に応じた治療方法をご提案します。

痔ろう(穴痔)とは

痔ろうは、肛門の歯状線にある「肛門陰窩(一次口)」から菌が入り込み、膿が溜まった後、肛門外側へ抜け道(二次口)が形成され、その間が瘻管(トンネル状の道)として残った状態です。

なぜ自然に治らないのか

一次口は粘膜面にあり自然には閉じず、感染の入り口が残るため再発します。

肛門周囲膿瘍とは

肛門周囲膿瘍とは、痔ろうの前段階です。膿が溜まり痛みと腫れが生じます。破れて軽快しても、瘻管が残れば痔ろうへ進行します。

痔ろうの分類
(すみこし分類:I〜IV型)

痔ろうは、瘻管が肛門括約筋およびその周囲組織とどのような位置関係にあるかで分類され、治療方針が決まります。

I型:括約筋を貫かないもの(皮下痔瘻、粘膜下痔瘻)

浅い痔ろうで、切開開放術(Lay open)が基本です。

II型:内括約筋を貫くもの(筋間痔瘻)

括約筋に配慮しながら、Lay openまたはSeton法を選択します。

III型:外括約筋を超えて坐骨直腸窩に至る痔瘻(坐骨直腸窩痔瘻)

深部へ広がるため、Seton法や括約筋温存術が必要です。

IV型:外括約筋・肛門挙筋を超えて骨盤直腸窩に至る痔瘻(骨盤直腸痔瘻)

もっとも深い複雑型で、段階的治療と慎重な術式選択が必要です。

主な症状

  • 肛門周囲の痛みや腫れ
  • 膿が出て下着が汚れる
  • 発熱を伴うことがある
  • 痛みが良くなったり悪くなったりを繰り返す

診断

  • 視診、触診、肛門鏡検査
  • 必要に応じて MRI、肛門超音波

瘻管の位置・深さ・分岐を正確に把握することが治療成功の鍵です。

治療

痔ろうは薬では治りません。
根治手術が基本になります。

急性期:切開排膿

まず膿を出して痛みを改善します。

根治手術

一次口と瘻管を適切に処理し、再発を防ぎます。

術式

  • Lay open法(切開開放術)
  • Seton法(シートン法:ゴム糸で徐々に瘻管を切開)
  • 括約筋温存術(Coring out法など)

瘻管のタイプ(すみこし分類)により術式を選択します。

手術費用
(保険適用・3割負担の目安)

日帰り
(低位痔ろう・Lay open)

約 15,000〜30,000円

Seton法(通院管理あり)

約 20,000〜50,000円

複雑痔ろう手術 

約 60,000〜120,000円

※検査・麻酔内容により変動します。

手術後の過ごし方

  • 入浴・シャワーで清潔保持
  • 排便は下剤を使いコントロール
  • 痛み止めを適切に使用
  • アルコール・刺激物は制限

多くの方は数日〜1週間で日常生活へ復帰できます。

予防

  • トイレでいきまない
  • 長時間座位を避ける
  • 食物繊維と水分摂取

日帰り痔ろう手術の流れ

1来院前日

食事制限は不要(過度な飲酒は控える)
入浴は通常通り

2来院当日

  1. 受付 → 診察 → 手術説明
  2. 局所麻酔または腰椎麻酔
    ※麻酔方法は痔ろうのタイプと患者様の希望に応じて選択
  3. 手術
    Lay open法 / Seton法 / 括約筋温存術 など
    所要時間:15〜60分
  4. 休憩・創部の確認(30〜60分)
  5. 歩いて帰宅可能
    ※必要に応じて座薬・痛み止め・下剤を処方

3当日夜

入浴は シャワー浴のみ
強い痛みがある場合は痛み止めを使用
軽食でOK、飲酒は不可

4翌日〜1週間

座浴 / シャワーで清潔保持
排便は 下剤でやわらかく 調整
仕事復帰目安:デスクワークなら 2〜3日

51〜3週間

Seton法の場合、徐々に締まっていく過程で軽度の違和感
通院しながら調整

61〜3ヶ月

創部が安定し、違和感・出血はほぼ消失
再発防止のため、排便コントロールと生活習慣改善を継続